2015年11月12日 公園

眼鏡をかけていないと、全てのもののりんかくがぼんやりする。遊覧飛行をする鳥の群れは、いることはわかるけれどどんな形の羽か、細かな色の違いがあるのか、などはぼんやりぼんやり。たくさん人が歩く。小さな画面を見つめている人はちょっと歩きにくそうだ。ベンチにエメラルド婚式記念と書いてあり気になり、小さな画面で調べると結婚55年?60年の記念の式だと書いてある。将来に関しては眼鏡を外した時同様、ぼんやりしている。眼鏡はどこにも売っていないから自分で作らなければと思うのだけれど…。近頃まったく勉強もできていない。度なしの赤いサングラスを作る技術は発達しているような気がする。

 

噴水の水飛沫の小さな粒子のような水がこちらに来る。ベビーカーに乗る子供が、自分・私・我が無いままでこちらに笑いかける。覇気がない私は邪気のない子供に手を振る。たぶんかわいい、ような気がする。

隣のベンチに座る夫婦はしぐれおにぎりを食べながらネットのニュースを見て、互いに意見を言い合っている。白い鳥がさーっと音を立てて円を描くように飛んでいる。

黄色い葉のつく木は風に強請られて葉を地に舞わせる。木と私の細胞が融合していたら、おもしろいかな。私はつまりここに居なくてもそんな変わりはなくて、全ての物事がふつうに進む。実験対象の私。

 

影が揺れている。みんな誰彼のことをくちぐちに言う。クールジャパンってなにか冷たい感じねととなりの婆が言う。

 

 

______ここから佐藤春夫『美しき町』より引用(長いので割愛)

 

 

タイツが伝染した、それだけの事で自分の価値がひどく下がったように思える。私は私のことで本当にいっぱいだ。制服を脱いでしまったら私がどんな人間か誰かなんてすぐ分からなくなってしまうのだろう。重要視されすぎた制服、他人の憧れも軽蔑も全て受く受容器となる制服。同じ記号のなかの美しい数字たち。制服を脱いで見たことのない記号に囲まれて…ああ記号、私の記号は何であったかと思い始める。記号を探してさまよったり、記号の中にむりに入ろうとして記号を恨み、記号に憧れ、記号なんてと思いはじめる。記号、記号…。

 

読書同好会

・Y先生/S先生

 

 

以上